事例紹介

マグネトロンスパッタリング装置のご紹介

 

地方独立行政法人大阪産業技術研究所様に、試作研究から製品開発まで幅広く薄膜産業のニーズに対応できる高い操作性と多数の機能を備えたマグネトロンスパッタリング装置を納入しました事例を紹介させていただきます。

 

マグネトロンスパッタリング装置による薄膜作成は、幅広い素材の薄膜を、高い密着強度で再現性高く製膜できる方式として広く使われています。2020年3月に納入しました装置は、薄膜開発に求められる多数の成膜機能と簡便な操作性を兼ね備えています。

 

スパッタリングは、高電圧で加速されたプラズマのガスイオンが薄膜の原材料(ターゲット)に衝突し、衝突により弾き飛ばされたターゲット表面の原子や分子が、真空中で成膜対象物(基板)に到達し堆積することで薄膜が形成される成膜方法です。真空チャンバー内に、薄膜の原材料(ターゲット)と成膜対象物(基板)が配置され、その間には高電圧が印可されています。真空チャンバー内に低圧のガスを導入すると、高電圧の印可と放電によりプラズマが発生し、プラズマのガスイオンが高電圧で加速しターゲットに衝突することで、スパッタリングが始まります。

 

[マグネトロンスパッタ装置内部の写真]

 

マグネトロンスパッタリングではプラズマ生成にマグネトロン放電を用います。マグネットや電磁石によって磁場を加えることで電子を陰極周辺に集中させ、より低圧で高密度のプラズマを可能にします。高密度のプラズマが陰極のターゲット近くにあることから、ターゲットに衝突するイオンが多くなり、成膜速度も速くなります。また、プラズマがターゲット側に集中することで、基板側のプラズマの熱やイオン等によるダメージも少なくなることから、マグネトロンスパッタリングはスパッタリングの主流の方法となっています。

 

今回納入しました装置は、弊社のMS-3C100L型マグネトロンスパッタリング装置で、スパッタ室、ロードロック室(LL室)、真空排気系、ガス導入系、電源系、基板温度制御系およびPCと制御装置からなる操作・制御系により構成されています。

 

 

[マグネトロンスパッタ装置の外観写真]

[マグネトロンスパッタ装置概略図 *1

 

スパッタ室には、ターゲットを取り付けるカソードが3元搭載されており、それぞれのカソードにRF又はDC電圧を印加、または重畳して印加することも可能です。またターゲットと基板間の距離は手動で100~150mmの範囲で変更することが可能です。φ200 mm までの基板を取り付けることができる基板ホルダーは、表面を0~200℃に加熱又は冷却できる温度調節システムと、2~20rpmの間で回転速度を調整できる基板回転機構を備えています。500W RF電源による基板バイアスにも対応しています。

 

ロードロック室内のカセットには基板を最大4枚セット可能で、スパッタ室内の基板ホルダーに基板を搬送・セットすることができますので、複数条件での成膜や多層膜の作成を自動で実行することも可能です。

 

成膜時のパラメータは、付属のパソコンを用いてログファイルに記録することが可能です。また付属のパソコンを用いて自動成膜プロセスのレシピを作成、編集し、装置の制御盤に送ることができ、煩雑な成膜工程の自動化や、同じレシピでの再現性の良い成膜を効率良く実現できます。

 

表1に装置仕様を示します。

 

表1 マグネトロンスパッタ装置(型式:MS-3C100L)仕様 *1

装置本体仕様
ターゲット 3元:各φ100 mm×3~5 mm
基板サイズ φ200 mm×10 mm以下、重量1.0 kg以下
基板-ターゲット間
距離
100 ~ 150 mm (ターゲット毎に調整可能)
冷温媒温度 -10 ~ 200 ℃(基板ホルダーの裏面に貫流)
基板回転 1 ~ 20 rpm (無段階調整)
到達真空度 ~ 1×10-6 Pa
真空排気系 直結型油回転真空ポンプ:VRD-65、ターボ分子ポンプ:TGkine3304MVWB-B
DC電源 Max. 3 kW 1基
RF電源 周波数13.56 MHz
・Max. 1 kW 1基
・Max. 500 W 1基(ターゲット、基板バイアス兼用)
(各自動マッチング機能付属)
使用ガス ・Ar (0.1~100 sccm)
・O2 (0.1~50 sccm)
・N2 (0.1~50 sccm)
共スパッタ機能 最大2元同時スパッタ(DC-RF、RF-RF)
ソフトウェア機能
製膜ログ機能 各処理工程における、真空度・冷温媒温度・ガス流量・スパッタ電力値・基板ホルダー回転速度の自動保存が可能
製膜レシピ機能 各処理工程における、使用基板・使用ターゲット・真空度・冷温媒設定温度・ガス流量・スパッタ電力値・基板ホルダー回転速度・製膜時間・シャッター開閉を設定可能。また、作成済みレシピの組み合わせが可能

 

産業分野によって必要とされる真空環境は様々です。お客様のニーズに合わせた最適な真空環境をつくるためには、様々な真空システム(排気ユニット・真空ポンプセット・真空装置)が必要となり、大阪真空はそれに応える幅広いラインアップの真空製品を提供しております。また、真空システムの設計、構成、製造において創業以来約70年間に蓄積された技術力、経験と実績を有しており、高真空から低真空までの真空ポンプ、真空コンポーネントなどの単品販売だけでなく、それらを真空システムに組み込んだ状態で提案可能です。ぜひ当社までお問合せください。

 

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「ご相談窓口」より、メール問い合わせもできます。

 

*1 地方独立行政法人大阪産業技術研究所 テクニカルシート No. 21-04「マグネトロンスパッタ装置」より引用

URL:https://orist.jp/content/files/technicalsheet/21-04.pdf