事例紹介

高機能フィルム製造プラント向け有機溶剤回収用「封液循環型 液封式真空ポンプ」のご紹介

 

今回紹介するのは、ポリオレフィン高機能フィルム製造プラントで真空蒸留により有機溶剤を回収する工程に用いられた、封液循環型(閉サイクル)の液封式真空ポンプです。

 

ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン類は、身近なプラスチック素材として、現代生活のあらゆるところで使われています。身近な用途以外にも、特に分子量が大きなものは、高機能フィルムとしてリチウムイオン電池のセパレータや電子部品の一つであるコンデンサの材料などにも用いられます。リチウムイオン電池のセパレータとは、正極と負極の間に設置されるフィルムで、充放電に伴うリチウムイオンの移動を妨げないイオン透過性を有しつつ、正極材料と負極材料の短絡発生を防ぐための電気絶縁性や機械的強度を兼ね備える高機能材料です。膜の構造を精密にコントロールすることで、多孔質のフィルムに目的に応じた分離性や透過性を持たせています。

 

今回の封液循環型(閉サイクル)液封式真空ポンプは、高機能フィルムの製造プラントにおいて有機溶剤を回収する真空蒸留工程に納入されました。有機溶剤の温度を上げると変質の恐れがありますが、真空蒸留では、減圧することで温度を上げずに有機溶剤を蒸発させ、回収することが可能になります。

 

[封液循環型液封式真空ポンプのイメージ画像]

 

液封式真空ポンプは、ケーシングとその内部にある羽根車から構成されています。ケーシング内に封液を入れて羽根車を回転させると、封液が遠心力によって内壁に沿ってほぼ一様な厚みのリングを形成します。この封液は隣り合う2枚の羽根と両側の壁に囲まれた室の中を回転位置に応じて出入りする為、一種のピストン作用を行うことになります。側壁または羽根車内側の円筒の適当な位置に吸・排気口を設けることによりこの羽根と封液及び側壁に囲まれた空間が増大する行程で気体が吸入され、減少する行程で圧縮され、更に吸引された気体は封液の一部と共に排出されます。

 

 

水を封液とした水封式真空ポンプは、水蒸気や薬品類の蒸気を含む気体の排気に向いたポンプとしてよく使われますが、今回の用途のようにプロセス蒸気の回収が目的の場合には、プロセス蒸気と同じ溶剤を封液として使用します。液封式真空ポンプがプロセス蒸気を排気する過程で、低温の封液を介して圧縮、冷却された蒸気が復液し、封液と共に回収されます。

 

液封式真空ポンプへの封液の供給は閉サイクル循環給液システムとしています。ポンプの排気口には気液分離器が設置され、ガスとともに排出された封液を分離、回収します。回収された封液は封液循環ポンプによって強制循環されます。液封式真空ポンプでは封液の蒸気圧がポンプの性能に大きく影響するため、封液は封液クーラーで冷却されたのち、ポンプに供給されます。今回の用途では封液温度が低い必要があるので、封液クーラーはブライン液で冷却しています。

 

このようにしてプロセス蒸気と同じ溶剤を封液とし、循環させることでプロセス蒸気を容易に回収することが可能になり、排水規制への対応にも役立ちます。また、今回のポンプと閉サイクル封液循環供給システムは、回収する有機溶剤の汚染を防ぐため、接液部はステンレス素材、シール素材はフッ素ゴムまたはPTFEとしています。軸シールはメカニカルシールとし、漏れを最小限としています。

 

産業分野によって必要とされる真空環境は様々です。お客様のニーズに合わせた最適な真空環境をつくるためには、様々な真空システム(排気ユニット・真空ポンプセット・真空装置)が必要になり、そのご要求に応えられる幅広いラインアップの真空製品を大阪真空は提供しております。高真空から低真空までの真空ポンプ、真空コンポーネントなどの単品販売だけでなく真空システムに組み込んだ状態で提案可能ですので、ぜひ当社までにお問合せください。

 

 

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